刑法學講話〔総論〕

豊富な図表は初學者の學習には大いに貢獻することと思います。 古今東西の刑法にまつわるというか、刑法と絡めて考えてみたくなる小話が隨所にちりばめられています。 「法育」の一冊目と、はしがきにあるので、各論版も是非期待したいです。

內容介紹

船山泰範先生は藤木英雄先生の著書のはしがきにも名前が出てくるとおり、本書冒頭でも藤木先生の學問的影響を受けられていることを示唆されてます。それもあって當然の如く、本書はいわゆる行為無価値論的な立場から平易に刑法総論を解説された入門書といえると思います。豊富な図表は初學者の學習には大いに貢獻することと思います。表題にあるとおり「講話」を標榜されており、ちょっと普通の刑法の學習書とは趣きが違います。古今東西の刑法にまつわるというか、刑法と絡めて考えてみたくなる小話が隨所にちりばめられています。
ちょっと「お堅い刑法の本は苦手」という方にもオススメです。大學の一般教養課程や社會人向けの公開講座等の読者層を意識したテキストなのかなとも最初は思えたのだが…。しかして分野によっては學説の対立も端的に紹介されており、判例も事案の説明から判決要旨まで十分に引用されています。刑法が苦手な人には新たな発見があるかもしれません。
船山先生の個人的な見解も、可能な限りきちんと斷った上で述べられています。「可塑性」という言葉に先生の刑法観が表れており、一般人が関わる刑法の問題について、自分自身の立場を考えるきっかけにもなる「さまざまな問題への投げかけ」がされています。
そんな事象のひとつとして、過失犯についての記述で269頁に注目。
「わが國では原子力発電所の大規模かつ破滅的な事故は今のところ発生していないが、十分に予想されるところである。」。
この一文に瞠目した。手元の奧付を捲ると2010年4月20日初版第1刷発行とある。この周辺のくだりは多くの示唆に富んだものですが、敢えてこれ以上レヴューでは觸れません。是非手にとって御一読を願いたい。「法育」の一冊目と、はしがきにあるので、各論版も是非期待したいです。

作者介紹

船山 泰範
昭和21年、東京都に生まれる。昭和46年、日本大學法學部法律學科を卒業。昭和48年、日本大學大學院法學研究科修士課程を修了。昭和58年、日本大學法學部専任講師となり、その後助教授?教授となり、現在に至る。この間、亜細亜大學?明治大學?慶応大學の法學部の非常勤講師(刑法、刑事訴訟法)、日本大學法科大學院教授(兼擔専任)を務める。

作品目錄

第1編 刑法および刑法理論
第1講 刑法の意義と機能
第2講 刑法理論
第3講 罪刑法定主義
第2編 犯罪論
第4講 犯罪論の體系
第5講 構成要件該當性と構成要件論
第6講 犯罪の主體
第7講 構成要件的行為
第8講 因果関係
第9講 構成要件的故意
第10講 具體的事実の錯誤
第11講 抽象的事実の錯誤
第12講 構成要件的事実の錯誤と違法性の錯誤との區別
第13講 構成要件的過失
第14講 不真正不作為犯
第15講 違法性の本質
第16講 違法性阻卻事由?正當化事由の意義と種類
第17講 一般的正當行為
第18講 安楽死?尊厳死
第19講 緊急行為
第20講 正當防衛
第21講 緊急避難およびその他の違法阻卻事由
第22講 責任論における基本概念
第23講 責任能力
第24講 原因において自由な行為
第25講 違法性の認識ないしその可能性
第26講 期待可能性
第27講 未遂犯
第28講 未遂犯の成立要件
第29講 中止未遂(中止犯)
第30講 不能犯
第31講 共犯論の構造
第32講 共犯論の基礎
第33講 共同正犯?教唆犯?幇助犯
第34講 共犯の特殊問題
第35講 罪數論
第3編 刑罰論
第36講 刑罰論
第4編 刑法の適用範囲(刑法の効力)
第37講 刑法の適用範囲(刑法の効力)
事項索引

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