內容介紹
昭和天皇に戦爭責任はあるのか、ないのか。あるとしたら、それは政治的責任なのか、道義的責任なのか。これまで何度となく繰り返されてきたこの微妙な問題に、終戦直後に生まれた3人が座談會の形で集い、「対決バトル討論」を交わした。加藤典洋、橋爪大三郎という今日屈指の論客に、竹田青嗣が行司役である。加藤は「天皇に戦爭責任がある」と斷じ、橋爪は當時の天皇の法的地位をタテに「責任は問えない」と反論する。これに対して竹田は、天皇の戦爭責任は、現在の基準から考えるべきなのか、當時を基準とすべきなのかと議論を整理する。加藤は橋爪の主張の一部を認めつつも、今に至る戦爭責任への國民の感情的シコリを指摘し、理屈だけでは解決できないと切り返す。
天皇の戦爭責任問題は、これまで「責任あり」「責任なし」という二者択一的な議論に収斂(しゅうれん)し、論者の政治的帰屬を確認するだけのものになってしまうことが少なくなかった。しかし加藤、橋爪両者にとって、どちらの立場に立つかは問題の中心をなしていない。2人の関心は自分の立場の防禦ではない。天皇の戦爭責任を白紙の狀態から考えるとしたら、どのような問題設定を行うべきかという、思考的実験を両者は競っている。保守?革新の対立にも似た不毛な議論の隘路(あいろ)に入ることなく、どのように知を構築していくか。新しい視點と切り口に満ちた、とくに若い人にぜひ読んでもらいたい1冊である。(西川 恵)